レポート

ruralで実感した贅沢で大人な野外フェスの楽しみ方

アンダーグラウンドなダンス・ミュージックの野外フェスとして、ここ数年メキメキと評判を高めているrural

今年は会場を移し新潟のマウンテンパーク津南にて開催された。ラインナップは相変わらず渋めのDJやアーティストに加えて、近年のインダストリアル界隈で再評価が高まっているIke Yardなどのバンドが揃った(これまた渋い!)。実力派のアーティストが揃うフェスだけあり、もちろん音にどっぷりはまり込むだけでも充分楽しい。

とは言え、野外フェスの醍醐味は都心のクラブでは味わえない、奇麗な空気や星空など、大自然がもたらしてくれる開放感にある。であれば、せっかく新潟・津南まで行くわけだし、ruralの素晴らしい音楽に加えて、地元の食べ物や温泉などの全部を楽しんでしまおう! という欲張りなコンセプトを持ってBANANAではrural 2014に臨んだ。

会場となったマウンテンパーク津南は、新潟の展望100選に選ばれる絶好の眺望スポット。そんな眺めの良さを期待しつつ、前夜祭から会場入りしたら、こちらの期待を踏みにじらんばかりの土砂降り……加えて空を見上げれば雷のオンパレードで、翌日からの開催があやぶまれるほどだった。

そんな天候に凹みつつも、Indoor Stageでヤケ酒をあおっていると、夜が明けるにつれて雨が止み、徐々に空が明るくなっていくではないか! このタイミングを逃すまいと速攻でテントを張り、明日からの好天を願った。その後天気は次第に回復し、雲も次第に減っていく。それでも天気予報を見ると月曜までずっと雨だったのに、まさに奇跡的な展開だ。

さて、ruralはIndoor Stageこそ48時間ノンストップではあるものの、メインとなるOpen Air Stageは夕方から始まり朝には終わる……ということは、昼間は暇なのである。

真夏のフェス体験者なら想像はつくと思うが、夏のテント泊で寝ていられるのは夜明けまで。ということで、分かりやすく時間をもてあましたので、付近の温泉をリサーチしてみることに。

津南には温泉の名勝地が数多くあることが分かり、まずは近場の温泉へと車を走らせてみた。会場から車で15分ほど、信濃川沿いにある一軒宿“しなの荘”へ。これが大当たり。室内風呂&露天風呂で絶妙の湯当たりに加えて人も少なく貸し切り状態。良い風呂を当てたあとは良い飯だ!いうことで、今日の夕飯のBBQの食材を買うため、旅館の女将さんに付近のスーパーの場所を教えてもらう。

ここで野外フェスでBBQする際の鉄則をひとつ。「食材は現地調達!」である。なぜなら自然が豊かであれば当然食材も美味いし、現地で調達すれば鮮度も良い、つまりは美味いBBQになるわけだ。

ということで、スーパーに行ってまず目に入った、信濃川で採れたであろうニジマスと津南ポーク(銘柄肉)をゲット。テントへ戻って炭を起こし、現地の食材の旨味に舌鼓を打つ。いや~何とも贅沢なフェスの過ごし方だと、自己満足に浸りつつ、1日目のアクトを見にフロアへ。

先述したIke YardのStuart Argabrightも率いる別プロジェクト・Black Rain、続くRegisあたりでダークかつストイックなruralらしいサウンドを堪能する。今年から導入した今話題のサウンド・システム=Void Acousticの調子も良いようで、低域の出方がハンパなく、とても踊りやすかった。

そして二日目の昼間がやってきた。酒は残っているが腹は減った、さて、何を食べるか……ということで、濃いものは避けたかったので、そうめんでリフレッシュ。真夏の野外で食べるそうめんは格別なのでオススメしたい。

さっぱりめの野外飯を堪能したら、今日行くべき温泉のリサーチを開始。車で1時間弱いったところに“秘湯”があるとの情報を得て、棚田の田園風景を横目に一路、車を走らせた。峠道を越えたあたりで見えてきたのは、逆巻温泉の川津屋。断崖絶壁の上にある温泉は、岩を掘った洞窟風呂で、基本的に貸し切り。無色透明で肌触りの良い温泉にこれまた大満足。

この温泉は飲用もでき、二日酔いにもバッチリということで、しっかりと温泉水を飲んで英気を養う。帰り道に野菜の直売所を発見したので、夕飯の食材を物色。農家のおばさんに津南の今の旬の野菜を教えてもらい、スイートコーンと青唐辛子、しいたけなどをゲット。何でも、津南にはこの時期に直売所などの地元にしか出回らないご当地メロンがあるそう。

訪れたタイミングでは残念ながら無かったので、来年こそは絶対に食べたい!テントへと戻ると、直売所の新鮮な野菜の炭火焼きに満足しつつ、2日目のフロアへ向かう。

Ike Yardのインダストリアル・サウンドを堪能し、AOKI Takamasaの安定感のある四つ打ちに酔い、Plaster、DJ Skirtのアッパーなセットで足を踏み鳴らす。夜空を見上げると、昨日は見られなかった満点の星空に大興奮。しばしの仮眠を取ってDJ Nobuに備えた。

ラストはまるで天気の神様が祝福してくれるかのような雲一つない晴天に恵まれた。ruralの意図をくみ取ってか、DJ Nobuがインダストリアルなダンストラックでフロアを煽り切る。帰り道は一日目の温泉に寄りつつ、新潟名物のへぎそばを食して帰路へと着いた(そのおかげで大渋滞にハマってしまったのだが)。

最後に、2014年のruralの総じてみると、ruralのオーガナイザーが呼ぶアーティストは確かな信頼感があり、期待を裏切らない。それだけでも音のクオリティの高さは特筆すべきだろう。だからこそ、音だけに浸かっても充分楽しめる。

でも、野外フェスティバルはクラブやライブハウスと違って、スペースや自由がある分、それぞれの楽しみ方ができるのが醍醐味である。そんな中、ご飯や温泉にこだわることで、さらに良い体験ができるのだ。良い音楽に身を任せるほど気持ちの良いものはない。でも、それと同じくらいに美味しいご飯や心地良い温泉、そしてロケーションは、音楽にも匹敵するインパクトを持っている。欲張り者なら、全部やってしまうに越したことはないのだ。

音が良くて、飯も美味くて、温泉も良くて、景観も良い。それなら聴覚、視覚、触覚、味覚、嗅覚をフルに使った方が楽しいに違いはないのだ。そんな意味でも、今年のruralは五感をフルに使った最高のフェス体験となった。

TEXT:伊藤大輔

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