レポート

rural 2015 大自然で堪能する最高のオープンエアパーティーの過ごし方

アンダーグラウンドなラインナップが贅沢に並び、2泊3日の野外フェスとして世界的な評価も高まってきたrural。音楽が素晴らしいのはもちろん、昨年より変更された開催地、新潟県・津南マウンテンパークの美しい自然と澄んだ空気、キレイな水、都会では見れないたくさんの星々…純粋なキャンプとして考えても最高なロケーション、コンパクトな会場構成、ゆったりとしたキャンプスペース、パワーアップされたOpen Air StageのVoid Incubus、48時間ノンストップのIndoor StageのPioneerによるサウンドシステム、そして遊び慣れたたくさんのオトナのお客さんたち。

音楽を楽しむのはもちろんだが、ご飯や温泉、そしてキャンプそのものを贅沢に楽しむ。そんな大型フェスでは味わうことの出来ないリラックスした3日間を過ごした。(今年も。)

BANANA号は、土曜日の朝10時にのんびりと出発しては、はじめまして!な挨拶をしながら、少しずつ打ち解け、リラックスした頃に、サービスエリアでお昼ご飯を食べつつ向かう。サービスエリアの旅行の雰囲気は牧歌的で、旅のワクワクを増長する。津南エリアに入っては、地元のスーパーにより新鮮な野菜や魚を調達し、そして肉屋へ妻有(つまり)ポークを調達に向かう。妻有ポークは、新潟県妻有地方(十日町市・津南町)の10農場で結成される「妻有畜産グループ」が、健康な豚を育てるための環境を地域ぐるみで整え、年月を掛けて愛情をたっぷりと込めて育てられた地元の豚肉ブランドである。我々はバラ500gとロース500gの計1kgを調達し、ほくほくの状態で会場へ向かう。ちなみに1kgでも5,000円ほどと実にリーズナブル。定期的なお取り寄せを検討した程だ。

さて道中は雨にも見舞われていたが、会場に近づく頃には、すっかり雨は上がり、美しい津南の大自然が視界に広がる。ここは大地の芸術祭が開催される場所で、無印良品のキャンプ施設もある素晴らしい場所。都会で生活していると絶対に手に入れることの出来ない穏やかな感覚が肌に広がる。

会場入り後はテント設営を参加者全員でして、ベースキャンプの出来上がり。そしてメインステージでプレイするF#Xのベースを感じながら、さっそくBBQである。このゆるさこそが幸せなのだ。

先ほどスーパーで調達したばかりのとうもろこし、エリンギとしめじのバターホイル焼き、粗挽きソーセージ、箸休めにザーサイにキムチ、それらをビールで乾杯しながら、開放的な気分で、どのアーティストが何時からだとか、最近仕事どうよ、だとか、これから予定している旅のこと、恋人とのなれそめ、美味しい料理の話、癖の話、愛嬌について、話題は過去、現在、未来を行き来しながら、楽しいキャンプを過ごす。そうした楽しい時間を割って入る妻有ポークの塩こしょう焼き。こぼれ落ちる肉汁、口の中に広がる甘いうまみ。最高の入口だ。

これからそれぞれが初夜を楽しむためのキャンプとして最上級の時間が流れる。

お腹を満たした我々はOpen Air Stageへ。

ENAのライブは太陽が沈んだことを告げるように、深淵で立体的な音響アプローチと、低いベースがどっしりとカラダ全体を下から上へ伝わる。その流れを受け継ぎHypnobeatのド・ディープでエクスペリメンタルだけど、じわじわと踊ってしまうライブ。James Dean Brown(そうダンスミュージックファンにとっての神レーベルPerlonからのリリースでもおなじみの彼だ)とHelena Hauffによる最高のパフォーマンスを堪能した。

そして、その次はAoki Takamasaのライブ。コンピューターで鳴らされているとは思えない程に有機的で、人間的なグルーヴがパワーアップしたruralのサウンドシステムで鳴らされる。時折顔をのぞかせる上品で繊細な隙間と、すっかり夜になった会場を怪しくムーディーに照らす照明によって、会場はすごくいい雰囲気を作っていた。

我々のお腹は満たされており、程よい酔いと眠気と、山のひんやりした空気に、日常を忘れ、溶け込んでいった。これは恋に落ちれるわ。と思いながら、いつも通りの友人たちと談笑をする。この魔法はおそらく音楽と場所と天気、そこに集う人々のかけ算によって出来上がるものであり、テキストでも写真でも、そして言葉でも簡単には言い表せない。音楽やお祭りは生きていく上で必ずしも必要なものではない。合理的に考えると最初に削ぎ落とされるものである。だけども、生きていることを実感し、生きていることをより良きものにするものである。「貧乏とは花を買う余裕がないことをいう」。そんな言葉をふと思い出す。

非日常空間で、好きな人たちと、好きな音楽を楽しむ、そしてそこにお金と時間を使う。ただの遊びを超えた体験がここ、そして世界中に広がっているだ。色々語る前に、旅に出よう。旅をしながらたくさんの話をしよう。

脱線した。もっとruralの話をしよう。

Shawn O’Sullivanを聞きながら、テントに戻ったり、フードコートを見て回ったり、現地で合流した友人と談笑したり、「フェス中盤の自由な楽しい時間」を勝手気ままに過ごす。だが、その後Cio D’Orに再び我々はじっくりロックされる。今回のベストアクトの声も高く、冒頭怪しくゆっくり立ち上げ、そして全体をその独特の世界感で包んだまま走るハイハットを鳴らして、完全に深夜にしてしまった。あぁ気付けば1日目ももう終わりに近づいている。The Long Count Cycleがスタートしてしばらくすると、だんだんと辺りは紫色とも言える青白い空に変わる。途中Indoor Stage側のなだらかな丘の上から、目の前に広がる雄大な自然とそこから登る朝日を眺めながら、眠たい目をこすりながら、テーマのない話を繰り返す。都会の百貨店の屋上でも、高級なレストランのテラスでも味わえない超贅沢なロケーションを味わう。

Further Reductionsのグルーヴィーで、初日のアクトの中で最もシンプルなダンスミュージックとも言える軽快な音ですっかり明るくなった頃に1日目を終える。すっかり朝を迎える頃には眩しい太陽がテントを照らす。

全員が目を覚まして我々が向かった先は、風呂。昨年のリサーチと実績からなる安定の“秘湯”逆巻温泉「川津屋」である。棚田の田園風景を横目に車で1時間弱走れば、断崖絶壁の上にある施設が登場する。ここは岩を掘った洞窟風呂で、基本的に貸し切り。BANANAご一行貸切でさっぱり最高な風呂そして、川のせせらぎが聞こえる畳の間でのつかの間の休息。

奥のちょこんと置いてあるコップで温泉の掛け流しの源泉を飲めるのだ。二日酔いにもばっちり!!

さて帰り道に再度食材を調達して戻ってはさっそく飯である。本日の献立はソーメン。外で食べるソーメンの美味しさたるや格別である。ショウガ、ネギ、わさび、梅。(梅があったかどうか忘れたが)それぞれ好きな薬味で食べながら、そこに加わる今回のツアーの目玉の一つ、妻有ポークの冷しゃぶサラダ。すっかり楽しい楽しいキャンプの出来上がりである。2泊3日にわたりゆったりとした時間が流れるパーティーだからこそ実現できるこの贅沢。2日目も良いスタートを切る。

メインステージでは、Jane Fitzが濃厚な霧を見方につけた妖艶でディープなセットを披露している。ベースキャンプで休憩を挟みつつ、2日目のパーティーが立ち上がる。このキャンプとフロアの近さも魅力的である。続くHelena Hauffの素晴らしいDJと、Wata Igarashiのフロアにど直球で落ちるハードウェアで構成されたライブを堪能する。

そして夕食である。今日は昨日の食材の余りを上手に使いながら、豚キムチ、焼きそばとお腹を一杯にする。途中購入したはずのホタテを紛失するなどのアクシデントに見舞われたが、それをかき消すような美味しい地酒の原酒は空気を一転させ楽しいBBQとなった。

さて、メインステージではDJ NOBUがruralのカラーにマッチするような実験的な音を挟みながらじわじわと雰囲気を作り上げ、途中降り出した雨もあがりボルテージはピークへ向かい、ORPHXへと繋ぐ。眠気に負け眠ったり、ゆっくりしたりしながら、Pearson Soundのハウシーなグルーヴを感じるテクノセットで美しい朝を迎えた。目覚ましにビールを飲みながら、そういえばまだ見ていない会場内の湖まで足を運んだり、だんだんと集まるフロアにイスを持ち込んでゆったりと過ごしたり、すっかりとリラックスしてパーティーの終わりへ向かった。

すっかり太陽はのぼり、完全な晴れ。汗ばむフロアでは笑顔で溢れ、Functionが終盤完全にハウスセットへ。ruralの実験的で硬派なテクノのイメージを最後全てひっくり返すようなハウスセットに、自然と笑顔とハグが溢れる幸せなダンスフロアに。

最高の仕上がり。最高の夏の開幕。ステキなオープンエアパーティーrural 2015が幕を閉じる瞬間の出来事である。

我々はその後、炎天下の中テントをせっせと片付けては、途中これまた温泉により、そして新潟といえばへきそば。お土産屋さんに寄り道しながら、そばを食べ岐路に着く。

これら一連の魔法のような時間が終わりを迎える。火照ったカラダで降り立つ渋谷の空気は現実的で、気が引き締まる。そして素晴らしい時間を過ごしたことをまた思い出し、タクシーを捕まえ家路に着く。

移動は感覚を拡張する、体験はインスピレーションを与えてくれる。また来年素晴らしいrural 2016が開催されることを期待したい。そして、来年参加したい人はよかったら声をかけて欲しい。

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